古関裕而は、生前、家族に好きな曲は?と聞かれて、

「白鳥(シラトリ)の歌」「オリンピック・マーチ」をあげています。

 

「オリンピック・マーチ」は昭和39年(1964年)10月の

東京オリンピックの開会式で演奏された曲です。

 

「白鳥の歌」は、若山牧水の短歌に曲をつけたものです。

短歌の作曲は難しいと言われますが、古関は苦労せずに

作曲することができました。

 

ここでは、「白鳥の歌」が生まれた背景について

ご紹介したいと思います。

 

白鳥の歌とは?

 

白鳥の歌は、昭和22年(1947年)に発売されました。

 

当時は戦後まもない頃。

まだテレビは普及していない時代です。

 

白鳥の歌は、連続ラジオドラマの主題歌でした。

ラジオドラマ(Wikipedia)

 

ドラマは長谷川幸延(コウエン)による「音楽五人男」で

音楽担当は古関でした。

長谷川幸延(Wikipedia)

 

長谷川は、主題歌に若山牧水の短歌を持ってきます。

 

白鳥は悲しからずや空の青 海の青にも染まずただよう

 

古関は「昔から牧水の短歌が好きで読んでいた私は、

何の苦労もなく作曲できた」と自伝で語っています。

 

一方、「短歌の作曲は難しい。」とも語っています。

 

短いために、一部を繰り返したりして作曲するのが定石であるが、

私はそれをやめて、あくまで短歌の持つムードをそのまま表現した。

山田耕筰先生はじめ多くの先輩作曲家が古典から現代までの短歌の中から

数多く作曲しているが、大衆に愛唱された短歌の歌曲は一曲もない。

そのまれな例がこの「白鳥の歌」ではないかと思う。

自伝「鐘よ 鳴り響け」

「放送の冒頭に主演の一人である藤山一郎さんが毎回歌った」

というこの歌は、教科書にも採用されたそうです。

 

古関と和歌を楽しんだ住職とは?

 

古関は、10代最後の2年間、親元を離れ

川俣銀行に勤務していました。

 

当時住んでいたのは伯父の家「ちりめん屋」で、

その裏手にはお寺がありました。(お寺は現在もあります。)

 

古関の自伝によると、お寺の住職は文学青年で

遊びに行くと古典文学の話をしてくれたとか。

 

住職は、中でも「万葉集」の話になると熱がこもり、

古関は万葉の世界に引き込まれます。

 

もともと和歌や詩に興味があった古関は、

万葉集を読むようになり曲をつけるようになります。

 

また、住職は催馬楽(サイバラ)が好きでした。

催馬楽とは古代歌謡のことだそうです。

催馬楽(Wikipedia)

 

住職は、催馬楽を聞いたり歌ったりするだけでなく

自分でもよく書いていて、古関はそれに曲をつけていました。

 

古関は、商業学校時代から上京直前までの音楽を

「音楽ノート」に記録していて、その中に

住職が作った詩が記録されています。

 

第八篇

「催馬楽(サイバラ)調一首木賊(トクサ)刈り」(作詞佐藤堯空)

斎藤秀隆著「古関裕而物語」

住職との経験は、後に「白鳥の歌」の作曲に生かされました。

 

昔から牧水の短歌が好きで読んでいた私は、

何の苦労もなく作曲できた。

十代に川俣のお寺の住職さんと和歌に曲をつけては

一緒に歌ったりした、あの経験がここに生きたのである。

自伝「鐘よ 鳴り響け」

東圓寺とは?

 

古関と一緒に和歌や催馬楽を楽しんでいたのは

東圓寺(トウエンジ)の住職でした。

 

東圓寺は浄土宗の寺院で、

古関の伯父が住む「ちりめん屋」の裏手にあります。

 

こちらは参道の写真。

左手に写っている蔵からお寺までは「ちりめん屋」の敷地でした。

 

東圓寺は室町時代後期(500年以上前)に開山され

最初は、向かいの山(舘の山)の中腹に建てられました。

 

お寺の向こうに見える山が舘(タテ)の山です。

 

最初のお寺は、寛永14年(1637年)の長雨による山崩れで崩壊し

その後、正保4年(1647年)に現在地に再建されました。

 

こちらが現在の本堂。雪の日に撮影しました。

境内にあるイチョウの木は、再建した頃に植えられたようで

福島県緑の文化財に登録されています。

開山良阿上人五百年遠忌記念誌(平成28年発刊)

古関と親しかった住職は二十世。

現住職の祖父にあたる方で、平成3年に亡くなっています。

 

古関は平成元年に亡くなっているので

住職は古関と同じ位の年齢だったのかもしれません。

 

こちらの記念誌の題字はその住職によるもの。

 

記念誌はお寺を開山した良阿上人の五百年遠忌を記念して

作られました。

 

現在の東圓寺は住職と副住職が兄弟で継いでいます。

御朱印は副住職に書いてもらいました。

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